【第6回】「想い」のバトンタッチ、準備はできていますか? ~事業承継~

様々な「想い」を抱いて経営されてきた皆さま、その「想い」を次世代にバトンタッチする準備はできていますか?

 

「自分はまだ若い、承継なんて必要ない!」「継いでくれる人もいないし、自分の代で廃業かな・・・」と考えているそこのあなた!
事業承継は決して他人事ではありません。

以下、「事業承継に関するよくある誤解」について見ていきたいと思います。

 

<事業承継に関するよくある誤解 その1>
「自分はまだ若い、承継なんて必要ない!」

まだまだお元気で経営の陣頭指揮を取っていても、突然その時はやってくるかもしれません。
体は元気でも、何らかの理由で自分が経営を続けられなくなる、そんなこともあるかもしれません。
私も、今までに「先代は元気に経営を続けていたが、ある日突然倒れて、引き継ぎに苦労した」あるいは「結局廃業せざるを得なかった。早めに準備しておけば・・・」という会社を多く見てきました。
準備自体は、早すぎるということはありません。
後で後悔することのないよう、そして大切な「想い」を引き継いでいけるよう、早めに準備をしておきましょう。

 

<事業承継に関するよくある誤解 その2>
「継いでくれる人もいないし、自分の代で廃業かな・・・」

継いでくれる人がいない、そう思うのは何故でしょうか?
自分の子どもは、やりたいことをやらせてあげたい。自分の会社は利益も出てないし、借金も多いから継いでくれないに違いない・・・
確かに、今は以前と比べ、親の事業を子どもが当たり前に継ぐという時代ではなくなってきています。
他にやりたいことがあるのであれば、無理に会社を継がせるべきではないでしょう。
ただ、もしかすると「子どもは会社を継ぎたいと思わない」というのは、親の思い込みかもしれません。
あなたの事業への「想い」を伝えれば、自分もその「想い」を引き継いで守っていきたいと思うお子さんも多いのではないでしょうか。

また、進んで事業を継ぎたいと思うような会社にしておく、というのも忘れてはいけません。
利益が出ておらず従業員もみんな疲れている、という会社よりも、利益がでていて従業員が活き活きと仕事をしているという会社のほうが、継ぎたいと思う人は多いでしょう。

では、自分には子どもがいない、子どもは既に別の道を歩んでいる、という人はどうでしょうか?
自分の子どもでなくても、親戚や従業員、取引先などで継いでくれそうな人はいないでしょうか?
他人には継がせたくない、という方も多いかもしれませんが、自分の事業を好きになって継いでくれるという人が現れたら、その人に継いでもらうという選択肢もよいのではないでしょうか?
その場合も、なおのこと継ぎたいと思えるような魅力的な会社にしておくことが大切です。
また、自分の「想い」を日頃から発信しておくことも有効でしょう。

それでも、継がせたい人がいない、というのであれば、M&Aで売却する、という方法もあります。
数年前までと違って、小規模な会社のM&Aも盛んになってきています。
自分が大切に育ててきた会社をお金で売るなんて・・・と思うかもしれませんが、考えてみてください。
もし会社を継ぐ人がいなくて廃業となれば、あなたの育ててきた事業への「想い」も、そこで働いてきた従業員の職場も失われてしまいます。
M&Aはただの金銭売買ではなく、「結婚」に例えられ、お互いの想いが一致していなければ成立しません。
実際にM&Aを検討する場合、都道府県ごとに設置されている事業引継ぎ支援センター(埼玉県ならば埼玉県事業引継ぎ支援センター)を利用することができます。
身近に後継者が見つからない場合、選択肢の一つとして検討してみてもよいのではないでしょうか?

そして、その場合もやはり「魅力的な会社」にしておくことは重要であり、高く売りたいと思うなら利益の出る会社にしておくことも考えなければいけません。

いずれの場合も、「事業の磨き上げ」によって魅力的な会社にすることが、理想的な承継への近道です。

 

<事業承継に関するよくある誤解 その3>
「事業承継は、大きな会社なら相続税対策が必要かもしれないが、うちはそれほど規模も大きくないし、対策は必要ないのでは?」

事業承継は相続税の問題と認識されることが多いですが、実はそれだけではありません!
むしろ、事業承継の問題を抱える会社の大部分は、相続税はさほど問題にならないのです。

事業承継の目的は何でしょうか?

今後も会社が永く続き、「想い」が引き継がれていくこと、ではないでしょうか。
そうだとすれば、相続税の問題はなくとも、「承継した後」のことを考えなければなりません。

1つは、「見えない資産」の承継の問題です。

仮に決算書の上では、それほどの資産を持っていない会社でも、他社が持っていない何かしらの「強み」を持っているということが多いです。
それは経営理念であったり、加工技術であったり、職場内のコミュニケーションであったり、取引先との関係性であったりします。
これらの「見えない資産」は、とりわけ小規模な企業の場合は現経営者に依存することが多いため、次世代にバトンタッチする時にしっかりと引き継がなければ、せっかくの強みが失われてしまいます。
特に、経営理念、すなわち経営者の「想い」は、現経営者が後継者に伝達するしかありません。
現経営者と後継者が十分に時間を取って、「想い」を伝えていくということが大切です。

2つ目は、相続人同士のトラブルの問題です。

中小企業の場合、経営を安定させるためには経営権(株式)を1人に集中させることが望ましいとされますが、仮に子どもが3人いて、保有資産のほとんどが株式であったとしたらどうでしょう?
後継者となる1人に全ての株式を譲渡する(相続させる)となると、他の2人は当然不満が残り、また「遺留分の請求」による法的トラブルに発展する可能性もあります。
このようなことがないよう、事前に株式の移転についても対策を練っておく必要があります。
方法としては、後継者が売買により株式を買い取る、経営承継円滑化法の「民法の特例」を利用する、種類株式を発行する、などがあります。(詳しい説明はここでは省略します)

3つ目は、「承継した後」の事業運営についてです。

見えない資産を承継したとしても、後継者が引き継いだ会社を経営していくには様々な問題が発生します。
先代が長年培った経営の経験は、一朝一夕には身につけられるものではありません。
後継者が次世代の経営者となるためには、それなりの教育や訓練を受けることが望ましいです。
たとえば、中小企業大学校では「経営後継者研修」を実施していますし、商工会や同業組合などで同じ経営者の仲間を作り刺激を受けることも効果的です。

さらに、事業承継は会社が発展するチャンスでもあります。
長く続く老舗の会社は、良い部分は残しつつも時代に合わせ変化を続けている会社が多いです。
すなわち、ただ先代の経営を真似するのではなく、事業承継のたびに後継者が新しく会社を作り直すというような意気込みを持って経営に臨むということが大切です。
そのために、後継者が中心となって「経営革新計画」の策定に取り組むなど、次世代の会社の在り方を十分に考える必要があります。
場合によっては、新しい経営者を支える社内のチーム作りを念頭に置き、後継者を中心としたプロジェクトチームで計画を策定するのもよいでしょう。

 

さて、とはいえ非常に業況の良い会社の場合は、相続税の問題が発生する場合もあります。

細かい点は税理士さんに譲るとして、今年(平成30年)から始まった「新・事業承継税制」についてご案内しておきたいと思います。

事業承継税制とは、事業承継を促進させるために国が制定した「経営承継円滑化法」に基づく施策の一つで、株式等の移転に伴う相続税や贈与税の一部を猶予する、というものです。
猶予といっても、一定の条件を満たしていれば更新し続けることにより半永久的に支払う必要がないというものでしたが、ひとたび条件を満たさなくなれば猶予されていた税金を払わなくてはならないというリスクをはらんでいました。
しかし、今年(平成30年)の改正により、猶予の対象範囲が相続税や贈与税の「一部」から「全て」に拡充されるとともに、更新の要件である「雇用の8割の維持」についても、満たさなくなった場合でも理由を報告することによりにより継続できるよう緩和されました。

この新制度を利用するためには、「特例承継計画」を作成して都道府県に提出する必要があります。
そして、この「特例承継計画」には認定支援機関(経営革新等支援機関)が「指導及び助言」する必要があると定められています。
(なお、代表の古屋は「認定支援機関」であり、埼玉県中小企業診断協会認定の「事業承継支援マスター」でもあります)

ただし、これは期限付きの制度であり、特例承継計画を平成35年3月までに提出する必要があります。
したがって、株式等の移転を伴う事業承継をするなら、この5年間が絶好のチャンスというわけです。

以上のように、事業承継には様々な課題が伴いますが、事前に十分準備をしておけば何も恐れることはありません。
もしここまで育ててきた会社を次世代に引き継ぎたいと考えているのであれば、事業承継に失敗して次世代に引き継ぐことができないのは非常にもったいないことです。

あなたが育てた「想い」、次世代に引き継いでもらって、さらに大きく永く育ててもらうために、しっかりバトンタッチの準備しておきましょう!

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