経営者には自己犠牲の精神が必要? ワクワク経営コラム【第195回】

皆さま、こんにちは!

ワクワク経営ナビゲーターの古屋早雪です。

冒険の世界で、自己犠牲の魔法や技などが出てくることがありますよね。
強敵と出会ったときなどに、自分の命を犠牲にして人々や仲間を助けるという展開に感動した経験のある方も多いのではないでしょうか。

現実の世界でも、「滅私奉公」という言葉があるように、自己犠牲の精神は尊いものと考えられています。
経営者は、自分の欲求を捨てて、世のため人のために尽くさなければいけないというような言葉を聞くこともあります。
確かに、成功している経営者は自らの利益を省みず、人に尽くしているという場合も多いように思えます。

しかし、本当にそうでしょうか?

それを考える一つの道具として、「生存者バイアス」というものがあります。

これは、ある過程において生き残った人や物、事のみを対象として検証することで、誤った事実を推論してしまう可能性があることを表しています。

例えば、ある調査で60人の経営者を調べました。
このうち、30人が自己犠牲タイプの経営者であり、これをAグループとし、他の30人をBグループとします。
この中で、より成功度の高い経営者15人を見てみると、10人がAグループで、5人がBグループの経営者であったということです。
すなわち、Aグループの中の3人に1人が成功度の高い経営者であったのに対し、Bグループでは6人に1人だったということになります。

この結果を見ると、自己犠牲タイプのほうがより成功する確率が高い、と思えますよね?

しかしながら、これはこういうことかもしれません。

ここに、200人の起業家がいました。
このうち、100人が先述のAグループ、他の100人がBグループです。 そして何年か後に、それぞれのタイプの経営者の成功度を5段階で評価したところ、以下のようになっていました。(1は倒産・廃業)

成功度AグループBグループ
5105
42025
32045
21015
14010
合計100100

一般的に、世間で日の目を見る経営者というのはある程度成功している経営者です。
すなわち、先ほどの60人の経営者の調査は、この中の成功度4以上の経営者を対象としたものです。
すると確かに、成功度5の経営者は、AグループのほうがBグループよりも多いですね。
しかし、Aグループに属する40%は成功度1であり、すぐに倒産または廃業してしまい日の目を見ることはありませんでした。
これに対し、Bグループでは75%が成功度3以上であり、それなりの成功を収めていると言えます。
成功度の平均値も、Aグループが2.5に対しBグループは3.0であり、Bグループの方が高いです。
こうして見ると、先述の60人の調査は確かに間違っていませんが、一概にAグループの方が成功する確率が高いとは言えませんよね。
すなわち、これは「統計上生き残った経営者」のみを対象としたために生じた、一種の「生存者バイアス」となります。
また、長時間働いた方が成果が出るという考え方や、年功序列、男性優位の職場といったものにも、同じことが言えるかもしれませんね。

ここで、そもそも「成功度とは何か?」という疑問が浮かび上がってきます。
会社の規模や年商、知名度、社員の幸福度など、様々なものさしがありますが、結局は経営者自身の考え方次第です。
前述の成功度でいえば、2や3は世間的に見ればそれほど成功ではなくとも、事業を続けているわけですから本人は幸せかもしれません。
しかし、1のように倒産・廃業してしまっては、経営者の想いが遂げられたとは考えにくいでしょう。
最低限、倒産してしまったり諦めてしまったりすることなく「継続する」ことは重要ですね。

もちろん、これは実際の調査ではなくただの仮説ですが、このように「世間的に日の目をあびる経営者」だけを見て、自己犠牲の精神を持っている経営者の方が成功している、自己犠牲の精神は尊い、と錯覚している可能性はあります。
そして、経営者も、自己犠牲ではなく、自分の人生における幸福を追求したほうが「自分の考える成功」を手にする可能性が高いと考えられます。

ただし、これは「自分の利益だけを追求」することがよい、というわけではありません。
これは「囚人のジレンマ」において、それぞれが自分の利益のみを追及することは、結果として最大の利益につながらないことからも分かります。

従って、自分の利益も、他の人の利益も、両方追求することが最も望ましいと言えます。
これは、近年話題のSDGsや、以前から存在する「三方良し」のように、自分も他の人も世界全体で持続可能な仕組みづくりを目指すという考え方であり、持続的な経営のためには必要なものであると言えます。
(ちなみに、私の所属している和光市商工会青年部の今年のスローガンである「共存共栄」という言葉も、これらに近いと考えています)

ワクワク経営も、お客様も、従業員も、経営者も、地域の人びとも、皆がワクワクする経営を目指すものです。
あなたも、みんながワクワクする仕組みで、自分の人生もワクワクするものにしませんか?

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